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第1回 食品・飲料 


自分に合った仕事に就くためには、業界の仕事内容や特徴、動向について知る業界研究が欠かせない。そこで、ここでは主要な29業界についてわかりやすく解説。「志望するのはこの業界!」と最初から決めつけず、まずはいろいろな業界を見てほしい。そこから気になる業界をピックアップし、深く掘り下げていこう。そこで志望業界に関連する業界まで研究すると、その業界の社会における役割をより深く理解することができるはずだ。
※各業界における主要企業の業績や最新動向については、業界勢力図をチェック!

食品・飲料 〜 人の活力源である「食」を提供

【業界の特徴】
 食品・飲料は、人が生きていく上で欠かせない「食」を提供する業界。乳製品、食肉・水産加工、冷凍食品、製粉、調味料、製菓・製パン、酒類、清涼飲料など、「食」に関連する分野は非常に幅広く、市場規模40兆円を超える巨大産業となっている。

【業界の動向】
 生活に密着した製品を扱うだけに業績の安定した企業が多いが、近年では少子高齢化による人口減少、不況による節約志向にともなう消費不振や単価下落、安価なPB(プライベートブランド)の台頭、若者の飲酒離れなどの影響で収益力が低下し、国内市場は縮小傾向にある。食品・飲料メーカー各社は、国内再編や海外市場の開拓、新商品の開発などに力を入れて生き残りを図っている。

 2010年以降も食品・飲料業界を取り巻く環境は厳しい。
 食品業界では、2010年中頃から続く小麦・大豆・トウモロコシなどの原料価格の高騰が追い打ちとなり、各社は生産体制の見直しなどによるコスト削減を急いでいる。また、2011年3月に起こった東日本大震災では、農水産物の産地や加工工場が壊滅的な被害を受けた。さらには福島第一原発事故による原材料の放射能汚染や、計画停電による生産休止などの問題もあり、来年度の業績への影響が懸念されている。
 2010年は猛暑による生産量の増加が見られた飲料業界も、2011年は横ばいにとどまる見通しだ。東日本大震災後、ビールは新製品の発売延期や生産品目の絞り込みを余儀なくされ、清涼飲料ではミネラルウォーターなど一部の商品が品薄状態に陥った。また、節電対策による夏場の輪番停電実施で自動販売機での販売数が減ったこともあり、業績の悪化が予測されている。

 食品・飲料業界における今後の最大の課題は、福島第一原発事故による原材料の放射能汚染への対応だ。国内における出荷制限だけでなく、日本の食品に対する輸入制限や禁止措置のために輸出に悪影響が出はじめており、事態は予断を許さないものとなっている。BSE(牛海綿状脳症)や産地偽装表示問題の発生以降、業界では食の安心・安全に注力してきたが、製品の生産・流通経路を確認できるトレーサビリティシステムの普及・強化や放射能検査の導入など、さらなる対策に迫られている。

【業界トピックス】
 一時ほどの伸びはないとはいえ、調理食品市場は好調をキープ。近年では単身者や若者向けの商品だけでなく、高齢者や病気の人の介護食として利用できる「ユニバーサルデザインフード」、長期保存でき、災害時の備えにもなる「ロングライフ製品」など、消費者のニーズに合わせたさまざまな商品が開発され、注目を集めている。
 一方、健康食品全体の需要は伸びているものの、健康の維持・増進に役立つ食品として消費者庁の許可を受けた「特定保健用食品(トクホ)」市場は2年連続のマイナス成長。不況による消費者の低価格志向をはじめ、花王の食用油「エコナ」の販売自粛や機能性飲料の失速などが原因と見られており、新たなヒット商品の開発が求められている。

 飲料メーカー各社は、樹脂の使用量を抑えた軽量ペットボトルの導入に力を入れている。資源節約やコスト削減につながるだけでなく二酸化炭素削減効果もあり、エコ意識の高い消費者の支持を得ている。
 若者の飲酒離れなどの影響で酒類市場は縮小傾向にあるが、「第3のビール」と呼ばれるビール風味の発泡アルコール飲料は引き続き好調。各社が新たな味や機能性を打ち出した新商品の開発を競う動きは、今後も続く見込みだ。

【業界キーワード】
●食品トレーサビリティシステム
 農産物や加工食品の生産から加工、流通、販売までの流れを記録として残し、商品からさかのぼって確認できる仕組みのこと。食の安全・安心を確保するため、農林水産省が導入を推進している。現時点でトレーサビリティシステムの導入が義務づけられているのは牛肉だけだが、その他の食品についても、バーコードやQRコードを利用して消費者などへ情報公開する動きが生産者やメーカー、小売業者などの間で広がっている。