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第19回 生命保険・損害保険
自分に合った仕事に就くためには、業界の仕事内容や特徴、動向について知る業界研究が欠かせない。そこで、ここでは主要な29業界についてわかりやすく解説。「志望するのはこの業界!」と最初から決めつけず、まずはいろいろな業界を見てほしい。そこから気になる業界をピックアップし、深く掘り下げていこう。そこで志望業界に関連する業界まで研究すると、その業界の社会における役割をより深く理解することができるはずだ。
※各業界における主要企業の業績や最新動向については、業界勢力図をチェック!
生命保険・損害保険 〜 病気、事故、災害……「もしも」の時のリスクを補う
【業界の特徴】
人が病気やケガ、事故、災害などによって受けた経済的リスクを、保険金を支払うことで補うのが生命保険・損害保険業界の仕事。保険会社は、個人や法人などの契約者から集めた保険料を有価証券(債券や株式など)や不動産などに投資して運用し、収益を確保しながら保険金の提供に備えている。
保険は生死に関わるリスクを扱う「生命保険(第1分野)」、人や物に対する損失を保障する「損害保険(第2分野)」、それ以外の傷害、疾病、介護などを扱う「第3分野」に大別される。しかし、損保各社も子会社をつくることで生命保険への参入が可能であり、第3分野のがん保険や医療保険などは生保・損保を問わず、すべての保険会社で扱うことができるなど、近年は規制緩和によって各分野の明確な違いは薄れてきている。
【業界の動向】
生命保険業界は、少子高齢化による新規契約の低迷で市場規模の縮小が続く。特に死亡保障など主力商品の伸び悩みに苦しんでおり、生保各社は高齢者や女性向けの医療保険など、需要が見込める第3分野商品の開発・販売に力を入れ、銀行窓口での保険販売を強化。損保系生保各社は代理店(一般に損害保険の販売は代理店が行う)や複数の保険会社の商品を扱う保険ショップなどを通して、主に第3分野商品のシェアを伸ばしている。
損害保険業界は、新車販売台数の低迷や住宅着工件数の減少でメイン商品の自動車保険と火災保険が販売不振に陥り、市場規模は横ばい状態。高速道路料金引き下げによる交通量の増大や高齢者ドライバーの増加で事故率が上昇し、自動車保険の支払い金額が増加していることも苦戦の一因となっている。厳しい経営状況を受け、損害保険業界では大型再編が相次ぎ、2010年からメガ損保3強時代に突入。今後は3強内でのグループ再編が活発化する見込みだ。また、アジアや新興国を中心とした海外の成長市場への進出も加速している。
東日本大震災の影響については、国内生保大手は2010年度に震災関連の保険金の支払備金(業界キーワード参照)を計上したため利益を減らしたが、損害保険に比べて規模が小さく、赤字転落は免れた。ただし、今後は被災地での営業が制限されるため、2012年度は各社とも減収を見込んでいる。
大手損害保険3グループも、2010年度は震災による保険金支払いの影響で大幅減益や赤字となった。保険金支払いの中心は企業の工場やオフィス向けの地震保険の保険金だ。しかし、2011年4月以降に負担する保険金についても支払備金を積み、2010年度の決算で処理したため、2011年度は異常危険準備金(業界キーワード参照)の取り崩しで業績は改善する見込み。政府と損保が共同で運営する個人向けの地震保険は政府支援などがあるため、ほとんど業績への影響はないとしている。
【業界トピックス】
生保・損保各社は、規制緩和や時代の移り変わりとともに保険商品の販売方法を変化させている。近年では銀行窓口での保険商品販売が全面解禁となったことから、生命保険業界では営業職員の訪問販売に次ぐ第2の販売チャネルへと成長した。また、新しい販売チャネルの開拓も進んでおり、インターネットや電話で簡単に加入できる直販型の安価な生保・損保商品が増加。ネット専業生保や直販系損保を中心に、今後もシェアの拡大が予想される。
2010年、第一生命保険が相互会社(保険会社だけに認められた組織形態。株主が存在せず、契約者が会社の構成員となる)から株式会社に転換し、時価総額1兆6000億円の上場生保が誕生。業界内で株式会社化への気運が高まるかと思われたが、現状では第一生命保険、三井生命保険、T&Dホールディングスなどにとどまり、新たな動きは見られない。しかし、2011年度からはソルベンシーマージン比率(業界キーワード参照)の新基準が適用され、自己資本を現在の2倍に積み増すよう義務づけられる上、2013年度以降には自己資本比率規制(業界キーワード参照)の強化がなされる可能性が浮上。規制が厳しくなれば一層の自己資本の上積みが求められるため、今後、資金力で劣る生保各社では、大規模な資本調達がしやすい株式会社化を目指す企業や、再編に向かう企業が増える可能性もある。
【業界キーワード】
●支払備金
保険会社が決算日までに発生した事故について、保険金支払いのために積み立てるお金のこと。保険金支払額が未確定のもの、保険金が未払いのもの、双方の金額を見積もり準備する。
●異常危険準備金
保険会社が地震や台風などの災害による保険金支払いの巨額化に備え、契約者から受け取った保険料から積み立てるお金のこと。保険業法で保険の種類ごとに積立が義務付けられている責任準備金の1つで、災害準備金とも呼ばれる。
●ソルベンシーマージン比率(支払い能力比率)
保険会社の健全性を測る指標で、保険会社が契約者に保険金を支払うために、どれだけ資金に余裕があるかを示した数値。数値が高いほど健全とされ、200%を下回ると金融庁による早期是正処置の対象となる。2010年度に従来の算出基準をより厳格化・精緻化した新基準が参考値として公表され、2011年度からの導入が決定している。
●自己資本比率規制
銀行や証券会社の経営の健全性を維持するために、一定の自己資本確保を義務付けた規制。自己資本規制の比率が高いほど経営の健全性が高いと評価される。銀行業界では2011年に、世界の金融システムで重要な金融機関(G-SIFIs)に自己資本比率 の上乗せを求める規制強化の導入が決定された。国際的に活動する保険会社についても、同じように自己資本比率規制を導入するための議論が進められており、2013年までに国際的な枠組み案が策定される見通しとなっている。
●かんぽ生命業務拡大
2010年に発表された「郵政改革関連法案」で、かんぽ生命の加入限度額引き上げ(1300万円→2500万円)や業務範囲の拡大などの方針が示された。これが実現すれば、民間生保は多くのマーケットで政府を後ろ盾とするかんぽ生命と競合しなくてはならないため、業界団体がこれに猛反発。法案の修正協議の行方が注目されている。


