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第1回 食品・飲料


業界研究で業界全体の動向を把握した後は、「業界勢力図」で時々刻々と変化する企業の動きをチェックしよう! 「業界勢力図」では主要29業界56分野における主な企業の勢力分布や最新動向、トピックなどを詳細に紹介。トライの家庭教師に登録している人なら無料で登録できる企業分析サイト「eol企業ナビ」で入手した情報も交えてお届けする。各業界の各企業はどのように将来を切り開こうとしているのかについて造詣を深めるとともに、彼らが求める人材像の一端をそこから読み取ろう。

食品・飲料 〜 キーワードは「再編・海外・新事業」

●食品

【食品(総合)業界売上高ランキング&対前期比】
1 味の素 1兆2.076億円 横ばい
2 明治HD 1兆1.140億円 横ばい
3 日本ハム 9.893億円 やや増加
4 山崎製パン 9.282億円 増加
5 マルハニチロHD 8.233億円 横ばい

【主要企業の最新動向&トピックス】
 少子高齢化による人口減少、不況による消費不振や商品の低価格化、安価なPB(プライベートブランド)の台頭など、食品メーカーを取り巻く環境は厳しい。2010年の後半以降は原材料の高騰にも苦しめられ、各社は生産体制の見直しなどによるコスト削減を急ぐほか、国内再編や海外市場の開拓、新事業への進出など、成長戦略の実現に力を注いでいる。また、福島第一原発事故による原材料の放射能汚染への対応が今後の課題となっている。

 業界首位の味の素は、トップシェアを誇る調味料を中心に、独自の技術を活かしたアミノ酸事業や医薬品事業を展開。2007年に鰹節メーカーのヤマキと業務・資本提携を締結し、カルピスを完全子会社化。2008年にはハム・ソーセージ業界2位の伊藤ハムと業務提携を行っている。また、同業他社に先行して海外進出を果たし、現在では世界100カ国以上に販売網を構築して着実に実績を上げている。2013年からはタイの新工場での生産開始を予定しており、海外事業のさらなる強化に余念がない。

 2位の明治ホールディングスは、明治製菓と明治乳業の経営統合により2009年に発足(2011年4月から食品「明治」、医薬品「Meiji Seika ファルマ」の2社体制に会社再編)。これにより、グループの売上高が味の素と並ぶ1兆円規模の食品メーカーとなった。乳飲料・乳製品、菓子のほか、育児用食品や介護食品、健康栄養食品など幅広く事業を展開。菓子、乳製品、健康栄養食品分野については、中国、東南アジア、アメリカを中心に海外事業を推進し、販売強化に取り組んでいる。菓子事業では、日本や海外拠点からの輸出品が世界40カ国以上で販売されており、2006年には中国に新工場を設立している。

 3位の日本ハムは食肉加工最大手。オーストラリアに牧場を持ち、タイで鶏肉の加工をするなど、グローバルに事業を展開している。2007年にはベトナムに合弁会社を設立するなど、中国や東南アジア市場への参入も積極的に行い、海外売上高の拡大を図っている。

 4位の山崎製パンは、国内パン業界で4割のシェアを誇る。2006年に買収した東ハト、2007年に資本・業務提携を結んだ不二家、ヤマザキナビスコなどの傘下企業で菓子事業を行うほか、ベーカリーショップの展開、スーパーやコンビニの店舗運営も手掛ける。東南アジア、アメリカを中心に海外進出を行っており、香港、台湾、中国(上海・成都)では現地工場での冷凍生地生産による店舗展開を確立。2006年からはシンガポールのベーカリー事業に参画している。

 5位のマルハニチロホールディングスは、2007年に水産加工食品のマルハグループ本社と水産・食品メーカーのニチロが経営統合して誕生した国内水産最大手。売上高の6割を占める水産事業を柱に、食品事業、畜産事業、保管物流事業を展開している。2008年にマレーシアの大手エビ 養殖会社を買収するなど、近年は海外でのM&Aや現地法人の設立を推進。北米、中国、東南アジアなどに設けた生産拠点は100を超え、アメリカ、欧州、アジアの各市場に加工食品を提供している。

【eol企業ナビチェック】
 eol企業ナビで、2010年度における食品(総合)業界上位5社の海外売上比率(全売上高に対する海外での売上高の割合)を調べてみた。
 結果をまとめると、「味の素(34%)、明治HD(該当データなし)、日本ハム(7%)、山崎製パン(該当データなし)、マルハニチロHD(10%)」となる。
 明治ホールディングスと山崎製パンが「該当データなし」となっているのは、海外売上高が10%に満たず、数字が公表されていないためだ(いずれも有価証券報告書の「セグメント情報」にその旨が記載されている)。
 これを踏まえると、味の素以外の4社の海外売上比率は1割〜1割未満ということになる。ちなみに、味の素同様、早くから海外進出を行っているキッコーマンの海外売上比率は44%、ヤクルト本社は25%となっており、これらのデータを総合すると、業界内での味の素の海外売上比率の高さがわかる。
 明治ホールディングスは将来的には海外売上高比率を20%程度にまで高めたいとしており、他の3社も海外進出に積極的な姿勢は見せているものの、実績としてはまだまだ。現時点での海外展開の遅れは否めない。
(数字は2010年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)

●清涼飲料

【清涼飲料業界売上高ランキング&対前期比】
1 日本コカ・コーラ —未公開—
2 サントリーHD(食品事業) 1兆0,404億円 大幅増
3 キリンHD(飲料・食品事業) 6,381億円 大幅減
4 日本たばこ産業(食品事業) 3,750億円 やや減少
5 伊藤園 3,516億円 やや増加

【主要企業の最新動向&トピックス】
 2010年は猛暑による需要増があったものの、景気低迷による自動販売機での販売不振や、量販店の値下げ圧力による低価格化に苦しめられた清涼飲料業界。国内での競争激化により、各社は生き残りをかけた再編や海外での事業拡大に乗り出している。厳しい状況は2011年も変わらず、東日本大震災後に一部商品が品薄状態に陥ったことや、夏場の輪番停電実施による自動販売機での販売数減などの影響も懸念されている。また、食品業界同様、福島第一原発事故による原材料の放射能汚染への対応が急務となっている。

 業界首位の日本コカ・コーラは、アメリカに本拠を置くザ コカ・コーラ カンパニーの日本法人。国内清涼飲料シェア1位を誇る(売上高は非公開)。国内12のボトラーが製造・販売を担当しており、自販機ビジネスに強い。炭酸飲料の「コカ・コーラ」だけでなく、「ジョージア」「爽健美茶」「紅茶花伝」など日本独自のブランドを展開。近年、大ヒットしたミネラルウォーター「い・ろ・は・す」は、容器に植物由来の素材を使用した100%リサイクル可能の軽量ペットボトルを導入しており、エコ意識の高さで支持を得ている。

 2位のサントリーホールディングスは、2009年にサントリー株式会社から社名変更。同年、キリンホールディングスとの経営統合を計画したものの合意に至らず交渉中止となったが、海外メーカーの買収や再編により、競争力強化と規模拡大に努めている。2009年にフランスの飲料メーカーを買収し、2011年にはシンガポールに100%出資の新会社を設立。同年内にはインドネシアの食品・飲料企業との合弁会社設立も予定している。主力の茶系飲料や缶コーヒーのほか、スターバックスとの業務提携によるチルドコーヒー、カロリーゼロのコーラ飲料「ペプシネックス」、特定保健用食品「黒烏龍茶」など多数のヒット商品がある。2010年度は「ボス」の主要アイテムや新商品が4年連続で過去最高の販売数を更新。ウーロン茶や天然水も好調を維持し、売上高、経常利益ともに過去最高の数字をマークした。

 3位のキリンホールディングスは、2007年に麒麟麦酒から社名変更し、飲料事業を担当するキリンビバレッジを完全子会社化。海外ではオセアニア、東南アジア、中国を中心に事業展開を行っており、2010年にシンガポール、マレーシアの飲料最大手を買収、2011年には中国の食品・飲料メーカーと合弁会社を設立している。「生茶」「午後の紅茶」「ファイア」などのブランドを柱に数多くの商品を展開。「午後の紅茶」は新商品の投入などで販売数を伸ばし、2010年の紅茶飲料市場で1位(食品マーケティング研究所調べ)となった。

  4位の日本たばこ産業は、たばこのほか、食料品、清涼飲料、医療など多角的に事業を展開。飲料事業では主要ブランドの「ルーツ」を中心に販売数を伸ばしている。ドトールコーヒーとの提携商品や京都の老舗茶屋との提携による茶系飲料を市場に投入するなど、他社との差別化にも注力している。

 5位の伊藤園は国内茶系飲料トップ。海外ではアメリカに子会社を設立し、緑茶市場の確立・強化を進めている。2010年は、国内で主力の「お〜いお茶」シリーズを4品に増やして堅調を維持したほか、紙容器タイプの野菜飲料や、タリーズコーヒーのノウハウを受け継いだコーヒー飲料なども順調に売上を伸ばした。同年にはチチヤス乳業を買収して乳飲料の共同開発も始めており、総合飲料メーカーとしての市場拡大を図っている。

【eol企業ナビチェック】
 eol企業ナビで、2010年度における清涼飲料業界上位企業の抱える課題をチェックしてみた(有価証券報告書を開示していない日本コカ・コーラは除く)。
 サントリーホールディングス、キリンホールディングス、日本たばこ産業、伊藤園の4社すべてが課題としてあげているのは「基幹ブランドの強化」だ。国内市場が伸び悩みを見せる中、各社とも収益の軸となる主要ブランドの新商品を投入し、競合他社との差別化や需要喚起を図っている。
 また、日本たばこ産業以外の3社は「海外事業の強化・拡大」も主要課題としている。中でもサントリーホールディングスとキリンホールディングスは積極的に海外メーカーの買収を行っているが、海外M&Aにはリスクがつきもの。現に、キリンホールディングスは2009年に買収した豪州企業の業績が振るわなかったことから388億円もの減損処理を行い、2010年度は減収減益に陥っている。今後は買収先の選別と買収後の運営が厳しく問われることになるだろう。
(数字は2010年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)

●ビール

【ビール業界売上高ランキング&対前期比】
1 キリンHD(酒類事業) 1兆0,979億円 横ばい
2 アサヒグループHD(酒類事業) 9,358億円 横ばい
3 サントリーHD(酒類事業) 5,760億円 横ばい
4 サッポロHD(酒類事業) 3,041億円 増加
5 オリオンビール(酒類・飲料事業)207億円 横ばい

【主要企業の最新動向&トピックス】
 少子高齢化や若者の飲酒離れ、消費不振の影響で、低迷が続く国内ビール市場。東日本大震災の影響で、2011年も出荷量の減少が予測されている。ビールや発泡酒の販売がふるわない中、好調をキープしているのは安価な「第3のビール(新ジャンル)」。各社ともビールに変わる商品として新製品の開発に注力しているが、熾烈な安売り競争に苦しんでいる。
 キリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営交渉が決裂したことで、国内の業界再編は小休止。ビール大手各社はアジア、オセアニアを中心としたM&Aによる海外進出や事業の多角化に意欲的に取り組んでおり、今後も加速する見込みだ。

 ランキング首位のキリンホールディングスは、国内ビール類シェア2位(各メーカーが公開しているのは酒類全体の売上高であるため、ビール部門のシェア順位とは異なる場合がある)。自社ブランドのほか、「ハイネケン」「ギネス」「バドワイザー」など海外ブランドビールの国内販売も行っている。2010年は定番の「一番搾り」が堅調で、新ジャンルの「のどごし〈生〉」、ノンアルコールビール飲料の「キリン フリー」も好調を維持した。近年はオーストラリアを中心に海外事業を促進しているが、2011年にブラジルのビール大手を完全子会社化するなど、他のエリアでも買収を継続中。

 2位のアサヒグループホールディングス(2011年にアサヒビールから社名変更)は2010年、2年ぶりに国内ビール類1位の座を奪還。新ジャンルの「クリアアサヒ」、糖質ゼロの発泡酒「スタイルフリー」が好調で、看板ブランド「スーパードライ」の新商品投入も行っている。中国での市場拡大に注力しており、 2009年に資本提携を結んだ「青島ビール」を現地で生産・販売。ビール世界大手のカールスバーグ(デンマーク)と海外での販売提携を結び、同社の営業網を使って香港、マレーシアでの主力商品の販売も行っている。

 3位のサントリーホールディングスは国内ビール類3位。海外ブランドビール「カールスバーグ」の国内販売も手掛ける。主力の「ザ・プレミアム・モルツ」は根強い人気を誇るが、2010年は新ジャンルの「金麦」、ノンアルコールビール飲料「オールフリー」の販売数が大幅に伸長。ビール類以外では、ウイスキーのソーダ割り「ハイボール」が大ヒットとなった。海外ビール事業ではアジア地域への主力商品の輸出販売を推進している。

 4位のサッポロホールディングスは「ヱビス」「黒ラベル」ブランドが柱。2010年は「ヱビス」の新商品「シルクヱビス」を通年販売し、新ジャンル「麦とホップ」とともに売上を伸ばした。子会社のあるアメリカ、カナダ、ベトナムを主な拠点に海外酒類事業を展開しており、2011年にはオーストラリア3位のビールメーカーと自社ブランドビールの生産・販売提携を結び、オセアニア地域にも足場を設けている。

 5位のオリオンビールは沖縄県で高シェアを誇るビールメーカー。アサヒグループホールディングス傘下のアサヒビールと提携関係にあり、両者の流通網を通じて互いの主力製品を販売している。2010年には、主力ブランド「オリオンドラフト」の新ジャンル「オリオンサザンスター」「オリオンリッチ」をアサヒビールが全国(沖縄・奄美諸島以外)販売している。

【eol企業ナビチェック】
 eol企業ナビでビール業界上位5社の技術・研究開発について調べてみると、新商品の開発はもちろん、既存商品のリニューアルも積極的に行われていることがわかる。
 各社とも、原料の質の向上や配合・使用法の見直し、自社技術による製法の進化などにより、主要商品の品質強化・改善や新商品の開発を推進している。
 また、サッポロホールディングスのように部門の枠を超えた社内プロジェクトチームを組んだり、オリオンビールのように提携関係にある他企業(アサヒビール)と共同研究を実施するなど、より画期的な商品開発を実現するための独自の取り組みも見られる。
(数字は2010年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)



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