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第19回 生命保険・損害保険
業界研究で業界全体の動向を把握した後は、「業界勢力図」で時々刻々と変化する企業の動きをチェックしよう! 「業界勢力図」では主要29業界56分野における主な企業の勢力分布や最新動向、トピックなどを詳細に紹介。トライの家庭教師に登録している人なら無料で登録できる企業分析サイト「eol企業ナビ」で入手した情報も交えてお届けする。各業界の各企業はどのように将来を切り開こうとしているのかについて造詣を深めるとともに、彼らが求める人材像の一端をそこから読み取ろう。
生命保険・損害保険 〜 生保・損保ともにメイン商品不調。損保はメガ3強時代に突入
●生命保険
【生命保険業界保険料等収入ランキング&対前期比】
1 日本生命保険 4兆8,964億円 横ばい
2 明治安田生命保険 3兆9,446億円 大幅増
3 第一生命保険 3兆3,124億円 減少
4 住友生命保険 3兆0,030億円 横ばい
5 ソニー生命保険 7,703億円 増加
※第一生命の保険料等収入は第一フロンティア生命含む
【主要企業の最新動向&トピックス】
少子高齢化により市場規模の縮小が続く生命保険業界。特に死亡保障など主力商品の新規契約獲得に苦戦しており、生保各社は銀行窓口での保険販売や、従来の生保、損保に含まれない傷害、疾病、介護など女性や高齢者層をターゲットとした第3分野商品の開発・販売に力を入れている。
東日本大震災の影響については、国内生保大手は2010年度に震災関連の保険金の支払備金(保険会社が決算日までに発生した事故について保険金支払いのために積み立てる資金)を計上したため利益を減らしたものの、赤字転落は免れた。ただし、今後は被災地での営業が制限されるため、2012年度は各社とも減収を見込んでいる。
業界1位の日本生命保険は国内民間最大、世界でも有数の生命保険会社。主力商品は医療保障・がん保障の「生きるチカラ」。かんぽ生命保険との提携により、郵便局という巨大な販売網の取り込みに成功。住信SBIネット銀行と提携し、銀行窓口での保険商品販売を強化中。2011年3月末時点のソルベンシーマージン比率(保険会社の経営の健全性を測る比率。数値が高いほど健全とされ、200%を下回ると金融庁による早期是正処置の対象となる)は944.6%。
2位の明治安田生命保険は、安田生命保険と明治生命保険の合併で2004年に発足。団体保険の保有契約高で業界首位。主力商品に終身保険の「ライフアカウントL.A.」がある。三菱東京UFJ銀行と中小企業分野における業務提携を行っているほか、みずほフィナンシャルグループでも保険商品を販売。損保大手の東京海上日動火災保険と提携し、同社の損保商品の販売も行っている。海外ではインドネシアの生保と業務提携関係にある。ソルベンシーマージン比率は1156.8%。
3位の第一生命保険は日本初の相互会社形式による生命保険会社として誕生したが、2010年4月、株式会社に組織変更し、東証1部に上場した。終身保険「順風ライフ」が主力。アメリカンファミリー生命保険(アフラック)と提携し、同社の第3分野商品を販売。みずほフィナンシャルグループとも業務提携を行っている。また、金融機関代理店向け商品の提供を目的に、業界初の生保子会社・第一フロンティア生命を設立した。ソルベンシーマージン比率は983.9%。
4位の住友生命保険は、終身保険「Wステージ」が主力商品。三井住友海上火災保険(現MS&ADインシュアランスグループホールディングス)と全面提携し、生保・損保商品の相互販売を行っている。また、三井住友銀行、三井生命保険とも提携関係にあり、各社の運用子会社を合併して投資運用・金融商品の三井住友アセットマネジメントを設立したほか、共同出資でメディケア生命保険を発足。インターネットや保険ショップを活用した通信販売を手掛けている。ソルベンシーマージン比率は1002.2%。
5位のソニー生命保険はソニーフィナンシャルホールディングス傘下。死亡保障商品が主力。オランダの保険大手エイゴン・グループとの合弁でソニーライフ・エイゴン生命保険を設立し、個人年金保険の販売を行っている。フィリピン、中国、台湾に駐在員事務所を設け、アジア展開を加速中。ソルベンシーマージン比率は2900.1%。
国内生保大手はこのほか、かんぽ生命保険(2011年3月時点で保険料等収入国内首位だが、民間生命保険会社に完全移行していないためランク外)、T&Dホールディングス(太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命)、富国生命グループ(フコクしんらい生命、富国生命)などがある。
損保系・独立系生保には、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、NKSJホールディングス、オリックス生命保険があり、損保系生保各社は代理店(一般に損害保険の販売は代理店が行う)や複数の保険会社の商品を扱う保険ショップなどを通して第3分野商品の販売を強化中。ネット系生保のライフネット生命保険は、直販型の安価な生保商品でシェアを拡大している。
外資系生保には、プルデンシャル・ファイナンシャル、アクサグループ、メットライフアリコ、アフラック(アメリカンファミリー生命保険)などがある。近年は、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)傘下のアリコを米国保険最大手のメットライフが買収、米保険大手プルデンシャルがAIGスター生命保険とAIGエジソン生命保険を買収するなど大規模な再編が続いたが、現在は沈静化。通信販売の格安生命保険や第3分野の保険商品が好調。
【eol企業ナビチェック】
保険会社は起こりうるあらゆるリスクを想定し、将来の保険金などの支払いに備えて責任準備金を積み立てている。eol企業ナビで第一生命保険の有価証券報告書に記載された事業リスクを見てみると……、
「株式市場の著しい低迷及び経済状況の悪化を踏まえて、当社は平成21年3月期に危険準備金及び価格変動準備金を取り崩しました。また、平成23年3月に発生した東日本大震災後に資産運用環境が大きく悪化したことを受け、当社は平成23年3月期に価格変動準備金を取り崩しました。」
とある。ここに出てくる危険準備金、価格変動準備金とは、いずれも責任準備金の1つ。危険準備金は、予測していた死亡率より実際の死亡率が高くなり、保険金等の支払いによって損失が発生する場合や、資産運用による実際の利回りが予定利率を確保できない場合などに対応するためのもの。また価格変動準備金は、株式などの資産の価格変動リスクに備えるためのもので、それぞれ積み立てることが義務づけられ、リスク対応が必要な場合に取り崩すことが認められている。
第一生命保険は保有する東京電力の株式価格が震災後に急落したため、2011年3月期決算において約1,000億円の評価損を出し、純利益は前年度比65.6%減の191億円となった。それでも赤字を免れることができたのは、価格変動準備金の取り崩しによるもの。保険会社はこのようにして、契約者への未払いリスクとともに、自らの倒産リスクも回避している。
(数字は2010年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)
●損害保険
【損害保険業界正味収入保険料ランキング&対前期比】
1 MS&ADインシュアランスグループHD 2兆5,437億円 横ばい
2 東京海上HD 2兆2,721億円 横ばい
3 NKSJ HD 1兆9,332億円 横ばい
4 富士火災海上保険 2,650億円 横ばい
5 共栄火災海上保険 1,588億円 横ばい
※ MS&ADインシュアランス グループHD、NKSJ HDの保険料等収入はグループ合算の数字
【主要企業の最新動向&トピックス】
損害保険業界は、新車販売台数の低迷や住宅着工件数の減少で、メイン商品の自動車保険と火災保険が販売不振。市場は横ばい状態のまま低迷している。厳しい経営状況を受け、損害保険業界では大型再編が相次ぎ、2010年から「MS&ADインシュアランスグループホールディングス」「東京海上ホールディングス」「NKSJホールディングス」のメガ損保3強時代へと突入。アジアや新興国を中心とした海外の成長市場への進出も加速している。
大手損害保険3グループは、2010年度は震災による保険金支払いの影響で大幅減益や赤字となったが、2011年4月以降に負担する保険金についても2010年度の決算で処理したため、2011年度は異常危険準備金(災害リスクに備えて保険料から積み立てた資金)の取り崩しで業績は改善する見込みだ。
業界トップのMS&ADインシュアランスグループホールディングスは、三井住友海上グループホールディングス、あいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の経営統合により2010年に誕生。主要子会社に三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険があり、2011年に傘下のあいおい生命保険と三井住友海上きらめき生命保険が合併して三井住友海上あいおい生命保険となった。損保のほか生保や変額年金の銀行窓口販売なども手掛ける。アジアを中心に海外展開を推進しており、アジア地域での正味収入保険料は約1,000億円に達している。
2位の東京海上ホールディングス(旧ミレアホールディングス)は、東京海上日動火災保険、東京海上日動あんしん生命、日新火災海上、東京海上日動フィナンシャル生命などを傘下に持つ。2008年に英保険会社と米保険大手を買収したことで、海外事業比率は3割超に。近年ではマレーシアでのシェア拡大にも力を入れている。2009年にはNTTの子会社であるNTTファイナンスとの共同出資により、インターネットや携帯電話を活用した自動車保険を取り扱う損害保険会社・イーデザイン損害保険を設立している。
3位のNKSJホールディングスは、2010年に損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が経営統合して発足。2011年に傘下の日本興亜生命保険と損保ジャパンひまわり生命保険が合併し、NKSJひまわり生命としてスタートした。セゾン自動車火災保険、そんぽ24損害保険などもグループ傘下。専業代理店(一般に損害保険の販売は代理店が行う)や地方銀行中心の金融機関代理店など、販売基盤の強化を推進している。シンガポール損保の買収やロシア保険大手との業務提携、トルコ損保の株式取得、インド・中国への拠点設置など海外事業の拡大にも積極的。
4位の富士火災海上保険は中堅の損害保険会社。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の傘下となる予定だったが、同社がサブプライムローン問題による経営危機に陥ったため、2010年にAIG系の損害保険持ち株会社である米チャーティスのグループ企業となった。同年、AIGスター生命保険と業務提携を結び、商品の相互販売を開始。AIG系損保の AIU保険と日本事業に関する業務提携を強化し、関係を深めている。
5位の共栄火災海上保険は三大都市圏でのシェアは低いものの、JA共済連、農林中央金庫などと業務資本提携を行っていることから、農林畜産業の従事者が多い北海道・東北・北陸・九州では高いシェアを誇る。全国大学生協連傘下の大学生協代理店で、所得保障保険・傷害保険・自動車保険などを独占して取り扱っている。
このほか、ソニー損保、アクサ損保、SBI損保などの直販(ダイレクト)損保が保険料の安さを武器にシェアを広げ、業績を拡大している。
【eol企業ナビチェック】
損害保険は、何も自動車や火災、地震に限らない。近年のペットブームに乗って業績を拡大しているのが、ペット保険の草分け的存在であるアニコム ホールディングスだ。
同社の中核企業でペット保険専業のアニコム損保は、2008年に営業を開始。ペットショップや動物病院との連携をはじめ、銀行・信用金庫などの金融機関代理店、カーディーラー代理店などの販売網を拡充し、2011年3月末時点で保有契約を34万件超にまで伸ばしている。
eol企業ナビでアニコム ホールディングスの業績をチェックしてみると、
【正味収入保険料】 2008年度 64億円/2009年度 89億円/2010年度 108億円
【純利益】 2008年度 -1.4億円/2009年度 3.4億円/2010年度 4.2億円
となっており、いずれも年々増加している。2010年3月には東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たしており、今後も躍進は続きそうだ。
(数字は2010年度の実績。有価証券報告書に基づき作成)
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